花札。

『ミナリ』を劇場にて鑑賞。

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韓国系の移民二世で、アメリカの田舎町で育ったリー・アイザック・チョン監督が、自らの体験をベースに撮り上げ、全米のみならず世界中の映画賞を席巻する活躍で話題となった感動の家族ドラマ。アメリカン・ドリームを信じて韓国からやって来た移民家族を主人公に、そのままならない日々を厳しくも温かなまなざしで丁寧に描き出していく。1980年代のアメリカ。農業での成功を夢見てアーカンソー州の高原に土地を買い、家族で引っ越してきた韓国系移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)。しかしそこは、誰も手を付けようとしなかった荒れ果てた土地。農業で生計を立てるためには想像を絶する困難が待っていた。それでも、しっかり者の長女アン(ノエル・ケイト・チョー)と好奇心旺盛な弟デビッド(アラン・キム)は、少しずつ新しい生活に馴染んでいく。一方、妻のモニカ(ハン・イェリ)は不便な生活に苛立ちを募らせ、夢ばかり追うジェイコブとの溝は深まるばかり。そんな中、夫婦は幼い姉弟の面倒を見てもらうために、韓国から母スンジャ(ユン・ヨジョン)を呼び寄せるのだったが…。

久々に劇場での鑑賞。
スタジオA24×PLAN Bという強力タッグで制作された本作。
本年度のアカデミー賞6部門ノミネートほか、”外国語映画賞”ということでちょっと問題になったゴールデン・グローブ賞受賞はじめ、各国の映画賞で話題になった。
で、”さもありなん”の出来栄え。
とにかく設定がよくできている。
これまで貯めた全財産をはたいて、何にもない高原の土地を買ったジェイコブ。
その地に着いた途端、トレーラーハウスがお出迎え。
”こんなの聞いてない”。うん、モニカが不機嫌になるのもよくわかる。
でも、アンとデビッドにとっては新天地。
しかも、遊びたい放題。
でもデビッドは”走っちゃいけない”と叱られる。
心臓に病気を抱えているのだ。
そんな新たな門出だが、先立つものがないし、農業をはじめるための初期投資も必要。
だから、ジェイコブとモニカ2人ともに、これまでも就いていたであろう、孵卵場で雄雌を選別する仕事に。
子どもたちを職場に連れてくるが、そうそうずっととはいかない。
そのため、モニカの実家である韓国から母であるスンジャを呼び寄せる。
このスンジャのキャラクターも楽しい。
なんせ、デビッドためにお土産として持ってくるのが”花札”なのだ。
デビッドは同部屋になってしまうし、こんなキャラだからしょっちゅう”おばあちゃんらしくない!”と不満を言い…。
農業は上手くいくのか、彼ら一家の関係はどうなるのか、などグイグイと引っ張り込まれる。
本作でいいのは、”韓国移民だから差別的な扱いを受ける”といったステレオタイプな描き方をしていないことだ。
もちろん、差別を受けた人々もいただろうが、おそらく監督本人はそういった経験がなかったのだろう。
だから描いていない。
あるいは、それを入れてしまうと、軸がブレてしまうと考えて入れなかったのかもしれない。
ともかく、結果的に彼ら家族の話にフォーカスされた。
正直、”農業はじめてたった1年で商品作物を収穫・出荷しようという考えは甘いんじゃないの”とか疑問も浮かぶけれど(アメリカではそれは当たり前なのかもしれない)、彼ら一家の悲喜こもごもに観客は共感するに違いない。
まったくの偶然だけれど、先日観た『タイム・オブ・ザ・ウルフ』の1シーンを彷彿させるシーンがキーポイントになっている。

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